ご挨拶 温故伝承館
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 酒づくり資料館 温故伝承館は、木と竹と布でできた道具だけで酒づくりがなされていた頃の器具、道具類を収集、整備し公開したもので、工業ではない生活文化としての酒づくりの姿と心を今に伝えるために、弊社が昭和59年に開館にこぎ着けました。また幕末期からの弊社の販売資料等も豊富に展示しています。

 日本酒は日本が生んだきわめて高い完成度を持つ醸造技術で造られてきました。江戸時代中期にはほぼ完成されていた清酒製造技術は、練達した杜氏や蔵人により代々伝えられてきたものです。経験と勘、また但馬や丹波などの杜氏集団が血縁地縁の言い伝えだけで、単純で素朴な道具を駆使して、米から高いアルコール分を産み出す技術を継承してきましたことは、驚嘆すべき世界に誇る文化的財産です。

 日本が明治以来近代化する中で、様々な改良と機械化がなされましたが、基本的思想が大規模化による生産効率の追求であり、発酵化学工業として装置産業化してきてしまった経過があります。

 これは神を招き人と神との仲立ちをする極めて祭祀的性格を持つものであった酒の本来の性格を消し去り、単なる飲料産業化を招いたことにもなります。
  昼間よく働いた人々の緊張からの解放、ストレスからの癒し、人と人とのコミュニケーションの媒介の手段等として、適量の酒にすばらしい役割があるもので、けして卑下したりするものではありません。

  ただ、本来「酒屋」は一歩引いた立場に立ち、心のこもった丁寧な製品を世に送り出すべきものだと、私共は考えてきました。世の中には理論や技術では説明できないことがまだまだ無数にありますが、清酒においても、同じ規格で造られたものでも、杜氏がより小さく手造りで丁寧に仕込んだものの方が、どうしても芳醇に酒は仕上がるようです。

 杜氏の後継者難等で品質を落とさず機械化、地元社員化を進めて行かざるを得ない今日、古来の酒づくりの道具を保存、展示する場を確保することは、その工業化されていない酒づくりの姿や精神を後の世代に伝え、造りをおろそかにさせない戒めのため、また消費者の皆様への周知広報を図るためぜひとも必要であると、弊社がその蔵とは不釣り合いな規模の資料館の建設を誓い取り組んできた次第です。

  海南市黒江は、古代の熊野街道沿いにあり、万葉集の昔には「黒牛潟」として詠まれ、室町時代からは紀州漆器の職人の街としてぬくもりのある街並みです。
  このWebサイトをご覧いただき、日本酒の楽しみの幅を広げていただければ幸いです。また遠路お越し頂ければさらにそれを実感していただけることと存じます。